ワークブーツの代名詞とも言えるアメリカのシューズブランド「RED WING(レッドウィング)」。アイリッシュセッターやベックマンがとりわけ有名だが、実は密かにレッドウィングファンからの人気が高いモデルがPOSTMAN(ポストマン)だ。今回はレッドウィングのツウ好みな名作「ポストマン」にフォーカスしながら、その派生モデルまで詳しく解説!
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名前の由来は地名だった!100年以上におよぶレッドウィングの歴史
1905年に、アメリカミネソタ州にある都市「レッドウィングシティ」で生まれたレッドウィング。紛れもないアメリカ生まれアメリカ育ちのシューメーカーだが、意外なことにルーツとなる創業者はドイツ人の「Charles Beckman(チャールズ・ベックマン)」で、彼は自らを「シューマン(靴男)」と名乗るほど、靴に情熱をかけていた。レッドウィングを創業する以前の1883年に、すでにチャールズ・ベックマンはレッドウィングシティでブーツと靴の販売会社である「Beckman and Co.」を設立。靴の販売事業は大成功を収め、レッドウィングが創業されるまでの22年の間に、50万足以上を販売していた実績を持つ。
その販売事業から、ワークシューズは街履きの靴と比べてより高い耐久性と機能性、快適さが求められていることに気がついたチャールズ・ベックマンは、より良質なフットウェアの開発を目指してレッドウィング・シューズカンパニーを立ち上げることを決意。100年以上経った現在でも、チャールズ・ベックマンの意志はひたむきに受け継がれている。
労働者に向けたワークシューズの開発で世にその名を轟かせたレッドウィング
創業時から、農業や林業、鉱業などに従事するワーカーにアプローチした「ワークブーツ」の生産に特化してきたレッドウィング。創業から7年後の1912年には、当時ミネソタ州で特に盛んだった農業にフォーカスし、ファーマーに向けたモデルである「ブラウンチーフシリーズ」をリリースした。ミネソタ州にちなみ、ミネソタ州周辺に住んでいた原住民であるスー族の村長をモデルにしたロゴを入れ、履き心地を重視したふっくらとしたラウンドトゥのフォルムと、グッドイヤーウェルト製法による堅牢な作りを特徴としたワークブーツを生産。ミネソタ州を中心にアメリカの広い地域で販売した結果、農家を中心とした労働者に大流行した。その流行具合というと、レッドウィングは当時、1日800足以上を生産できるラインを整えていたにもかかわらず生産が追いつかないほど出会った。このブーツの功績により、アメリカ全土にレッドウィングの名が知られることになる。
レッドウィングのシューズは、過酷な環境下で働くワーカーたちに向けて耐久度の高い素材を使用
ブラウンチーフシリーズで成功を収めたレッドウィングは、レザーソールを使用していた従来のワークブーツをさらに快適にするため、1920年代になると新たな素材でのアウトソール開発を進めることに。そして生まれたのが、レザーのデメリットである滑りやすさ、耐久度や耐水性の低さをカバーでき、レザーソールよりも安価に生産できるもの。現在では数多くのレッドウィングオリジナルソールが生み出されているが、その第一弾となったのが「グロコードソール」という、ラバーに繊維を練り込んだものだった。グリップ力があって滑りにくく、耐水性、耐久性に優れたこのソールのおかげで、ブランドはさらに飛躍。自社のみならず、他社のシューメーカーでもワークブーツやスポーツシューズに採用するほど画期的なラバーソールとなった。
レッドウィングの裏定番?制服で働く公務員のために作られたサービスシューズ「ポストマン#101」
レッドウィングには“ポストマン”と呼ばれる革靴が数種類あるが、その中でも原型となっているオリジナルのモデルが「POSTMAN OXFORD(ポストマン オックスフォード) #101」だ。モデル名の由来である郵便局員だけではなく、警察官や軍人など制服で働く公務員の靴はアメリカで「サービスシューズ」と呼ばれており、レッドウィングのポストマンもそのひとつ。発売当初こそ、そんなサービスシューズとして生み出された#101であったが、後にアメリカの郵便局のユニフォームシューズとして採用され、全米の郵便配達員が履くように。そんな背景があり「ポストマンシューズ」として、アメリカの労働階級者に広く知られるようになったのだった。その後、2000年代にレッドウィングのポストマン#101は一度姿を消したが、世界中のファンのラブコールに応えて2010年代には復刻され、靴好きのみならず、疲れにくい短靴として幅広い世代に愛されているモデルだ。
ここからはレッドウィングのポストマン#101のより具体的な特徴にフォーカス!
レッドウィング「ポストマン#101」の特徴①「郵便配達先の芝生を傷つけないように、と採用された“トラクショントラッドソール”」
レッドウィングのポストマンのソールには「トラクショントレッドソール」を採用。現代のレッドウィングでは様々なモデルに採用されている、レッドウィングファンにとってはお馴染みのソールモデルである。発泡し空気を含んだラバーソールで軽量なうえ、グリップ力が高いことが特徴。また、フラットな底面のパターンで異物に引っかかりにくいという特徴も持ち併せており、これによって郵便配達先の芝生に踏み込むことが多い郵便配達員が仕事中に芝生を傷ませないように、という理由から採用された経緯がある。また、足場の悪い屋外での狩猟用のハンティングブーツにも採用されていたこともあり、街履きのみならずアウトドアにも通用するレベルの機能性を誇るのだ。
レッドウィング「ポストマン#101」の特徴②「靴に軽さとクッション性の高さをもたらす“オールアラウンドグッドイヤーウェルテッド製法”」
一般的なグッドイヤーウェルト製法では、靴のヒール部分以外、前半分にすくい縫いと出し縫いをかけ、かかと部分はウェルトではなく「ハチマキ」と呼ばれるレザーパーツを用いる。その際、釘で固定されることが多いが、レッドウィングで採用されている「オールアラウンドグッドイヤーウェルテッド製法」は360度、外周全てに縫いをかけるのが特徴的だ。これによって軽さを出せるだけなく、靴底に敷き詰められるコルクの量も増えるため、クッション性の高さまでをも兼備できる。
これは、ウェルトが靴を一周することから「360度ウェルト」や「ダブルウェルテッド」とも呼ばれる製法で、レッドウィングのみならず、オールデンやフローシャイムなどのアメリカの老舗シューメーカーで多く採用されている。一般的な前部分に縫いをかけた「シングルウェルテッド」で作られた革靴よりも、さらにボリュームのあるデザインに仕上がるのも特徴的だ。また、かかとまで縫いをかけることによってソールの剥離などのトラブルがなくなり、耐久度がより増すというメリットも。ソール張り替えなどの修理の際もパーツを傷めることなくメンテナンスできるというのも嬉しい。
レッドウィング「ポストマン#101」の特徴③「一般的なガラスレザーよりも革の柔軟性を高めた“シャパラルレザー”」
ポストマンに使用されているシャパラルレザーは、レッドウィングファンにとっては聞き馴染みがある素材のひとつだろう。これは、いわばレザーに樹脂加工を加えたガラスレザーの一種だが、仕上げの段階で皮革の表面に塗料を塗りこむことで独特なマット感あるツヤが生まれ、さらに耐久性も兼ね備えた素材だ。もともとは他のガラスレザーと同様にシャパラルレザーも黒光りするツヤの強い仕上げがなされていたが、復刻後の2013年頃からは同じシャパラルレザーでも、マットでよりソフトな質感に変更された。これによってガラスレザーのデメリットでもある履き込んだ際の履きジワのひび割れが軽減し、革の馴染みが良くなったのだ。質感に変化は生じたものの、革そのものの性質は変わっていないため、ツヤを出したい場合はシュークリームで丹念にケアすることで、光るようなツヤ感が復活する。
レッドウィング「ポストマン」の他モデルを紹介!
RED WING(レッドウィング) ポストマン オックスフォード #9183
レッドウィングの特徴のひとつとして、カラーや素材ごとに品番が分かれていることも挙げられる。ポストマン#101の同型でデザインベースはそのままに、アッパーに「ブラック・ユーコン」を使用したのがこちらの「#9183」だ。これは牛革をベースに、そのなめしの段階で革の繊維自体に防水加工を施すことで、従来の防水レザーにはない通気性が確保されていることで知られる皮革。さらにこのモデルのライニングにはGORE-TEXを採用することで、アッパーの防水性を高め、ワークシューズブランドらしい機能性の高さを付与したモデルだ。
RED WING(レッドウィング) ポストマン オックスフォード #9112
スエードの「ラフアウトレザー」を使用した、#101と同型の#9112。スエードを作る工程として、革の床面(裏面)の毛足を整えたり厚みを調整したりと、毛を剪定するのが一般的だが、ラフアウトレザーでは起毛させただけであえて毛足を整えず、あくまで“ラフ”な風合いを楽しめる素材だ。カジュアルな印象は強いものの、ブラックステッチでまとめることで品のある仕上がりに。
RED WING(レッドウィング) ポストマン チャッカ #9196
これまでのダービーシューズモデルとうってかわって、ハイカットのチャッカブーツデザインを採用したポストマンがこちらの「#9196」だ。見た目はガラリと変わる派生モデルだが、上で紹介したポストマンシリーズの特徴はそのままに継承している。チャッカブーツをお探しの方はこちらを検討してみてはいかがだろうか?
RED WING(レッドウィング) ポストマン ロメオ #9198
最後に紹介するのは、シューレースを取り除きサイドゴアデザインを採用した「ポストマン ロメオ #9198」。流麗なカーブを表現したアッパーが美しい派生モデルで、チャッカともまた違った雰囲気を楽しめるモデルだ。ヒールにはプルタグが取り付けられており、デザイン性という点ではシリーズの中で異彩を放つモデルであると言えるかもしれない。
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